みだれめも 第284回

水鏡子


○近況(6月)

 6月の購入冊数187冊。購入金額26,191円。クーポン使用10,900円。
 なろう本91冊。コミック24冊、だぶりエラーと買い直しは24冊。
 新刊は、超法規的かえる『魔女と傭兵①』、「SFマガジン8月号」の2冊2,398円のみ。頂き本に『カイロの死せる精霊』多謝。

 高額購入本は、福島正実『百鬼夜行』(1000円)、集英社世界短編文学全集『⑰日本編 昭和』(500円)、須山計一『日本漫画百年』(500円・クーポン)、萩尾望都『私の少女マンガ講義』(500円・クーポン)、荒山徹『更科忍法帖』(390円)、小野二郎『ユートピアの論理』『運動としてのユートピア』『ユートピアンの発語訓練』(各300円)、DVD『豹の眼 青竜の洞窟』(1280円・クーポン)など。

 『百鬼夜行』は日本SFノベルズで文庫化されなかった数少ない作品のひとつ。角川文庫や旺文社文庫で組み直された短編集と被っている可能性はある。
 集英社世界短編文学全集は幻想作品が多く収録された全集で、これが入手してなかった最後の1冊。
 小野二郎は有名なウィリアム・モリスの研究家で、『世界のかなたの森』の翻訳もある。
 『豹の眼 青竜の洞窟』は、TVドラマに先行した映画版のDVD。「月光仮面」の後番組なので、川内康範の原作と思い込んでいたのだが、高垣眸だったことに驚く。本棚をみると講談社大衆文学館の高垣眸『龍神丸/豹の眼』がちゃんとあった。そういえば『恐怖のミイラ』も高垣眸の原作だった。

 242円以下の主な本。
 最近、岩波・講談社学術など、読み応えならぬ並べ応えのある文庫新書が110円でよく拾えるようになってきている。なかには読んだ跡もないきれいなものも散見する。講談社学術文庫は文庫本なのに千円以上するとけっこう騒いだものだった。今では二千円三千円のものがごろごろしている。今回はそのあたりも並べてみる。

 SF・ファンタジー関連:
単行本 宮沢伊織『そいねドリーマー』、山田正紀『イリュミナシオン』、文庫 『アンドロメダ・シティ』『派遣軍還る』、デュ・モーリア『いま見てはいけない』、陸秋槎『文学少女対数学少女』、など。
 その他小説・エッセイ類:
単行本 佐野洋子『死ぬ気まんまん』、日野啓三『此岸の家』、ルーマ・ゴッデン『すももの夏』、小島政二郎『私の好きな短篇』、別役実『馬に乗った丹下左膳』 文庫 島田一男『風姫八天狗 上下』、智里真志保編訳『アイヌ民譚集』、森まゆみ『昭和ジュークボックス』など。
 美術・芸術・文芸評論系:
単行本 なし 文庫新書 J・F・アンジェロス『ドイツ・ロマン主義』、皆川達夫『バロック音楽』、渡辺裕『歌う国民 唱歌、校歌、うたごえ』、フロマンタン『オランダ・ベルギー絵画紀行上下』など。
 自然科学系:
単行本 なし 文庫新書 野崎昭弘『逆説論理学』。
 人文・社会科学系:
単行本 ミシェル・モラ・デュ・ジュルダン『ヨーロッパと海』、M・B・ジャンセン『日本 二百年の変貌』、文庫新書 清水勲『ビゴーが見た日本人』、友松圓諦『法句経講義』、大貫隆訳著『グノーシスの神話』、小河陽訳『ヨハネの黙示録』、ルイス・フロイス『ヨーロッパ文化と日本文化』など。

○読書力の劣化について

 少し前、小説を読んでいて、前の行の読書記憶がすこんと抜けていくのが実感を伴って感じ取れ、今読んでいる行について、つながるべき文章が見えず、意味が読み取れなくなった。
 老化による、老眼での視野の狭まりや集中力の衰え、読書速度の減衰が理由であると思うのだ。
 老眼での視野の狭まりとは、読んでる行しか焦点が合わないということである。前後の行が視野から外れるということである。以前は、たぶん前後3行超を視野におさめ、ぼんやりと、読んだ行を復習し、読むことになる行を予習していたような気がする。
 それでも読み飛ばせるなろう本などではそれなりに流れをつかみ続けることは簡単なのだが、翻訳本についてはしっかりと読まねばならぬと意識する分、今読んでいる文章に集中しすぎて、前の文の読書記憶がすこんと抜けることになったように思える。これはいかんと読んだ部分とのつながりを意識しようとすることで、読書速度がさらに遅くなるようである。

 実際ここ数年、翻訳系の作品には1冊読むのに1週間近くかかることが増えている。そのわりにしばらく経つと読んだ記憶がなくなっていく。学生のころ図書館本など翻訳物でも一日二冊ときには三冊読むことは普通であって、そのくせ記憶は、今、時間をかけて読んだものより、はるかに鮮明なのである。
 これはどういうことかと、今回のすこんと抜けた衝撃と照らし合わせて考えたのは、学生当時の読書は映像記憶と併用しながら行われていたのでないかという推測だった。
 さっき三行まとめて視野に入れてと言ったが、当時は加えてページ全体を写真のように見据えたうえで必要三行を見ていたような。それがいまでは基本映像的でなく文字情報としてしかとらえられなくなっている気がする。

 当時、SFマガジンの百号以上について何が掲載されていたかすらすら言えて驚かれたりしたのだけれど、あれも表紙絵や目次写像に紐づけられての記憶であった。さらにもっと年少時、TVの主題歌を三回くらい聞いただけで暗唱できたりしていたのも、あれも映像情報と聴覚情報を合わせた記憶の生成であった。たぶんこどもというのは記憶を刻むために五感のすべてを使っていたのだと思う。だからこそ、昔の記憶は今でも鮮烈に思い起こせるのでないか。
 ああいう記憶の仕方を取り戻したいと切に思う。

○なろう本から

〇はまあ、お勧めできなくはない話。△はお勧めしずらい話。▲は小説としてちょっとであるが、少し気にしてよいかという話。

△  カミトイチ『SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師 ユグドラシルの呪いにより弱点である魔力不足を克服し世界最強へと至る』(電撃の新文芸)
スカイ・ノーレッジ『勝手に勇者パーティの暗部を担っていたけど不要だと追放されたので、本当に不要だったのか見極めます 』(ムゲンライトノベルス)
トマルン『俺と君達のダンジョン戦争』(TOブックス)
ぎあまん『底辺おっさん、チート覚醒で異世界楽々ライフ』(MFブックス)
ナガワヒイロ『悪役貴族による弱小領地の革命開拓』(エンターブレイン)

 6月読んだなろうは全体に△。


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