みだれめも
第279回
水鏡子
12月は小さなイベントが3つ。12月13日は恒例の1泊SF忘年会。青心社青木社長を幹事に旧関大SF研にKSFA系が合流したもので数十年続いている。菊池家村上家とひたすらカタン。その後24日のクリスマスイブに菊池家に呼ばれて一晩カタン。途中にある川西市にある古本市場に初めて行く。シオドラ・ゴスの早川SFシリーズ版を1冊500円で2冊拾う。12月30日はこれも恒例となっている旧関大SF研との大阪日本橋での昼食会。
SF忘年会の帰途はしばらくぶりに天牛書店本店に行って、一箱購入。300円で松永俊男『ダーウィンの時代』、メルロポンティ『行動の構造』、ドーキンス『祖先の物語上下』、『SFの本⑨特集新井素子』、100円で田中耕一『社会学的思考の歴史』、西原克成『追いつめられた進化論』、日本思想体系『⑨天台本覚論』『⑮鎌倉旧仏教』、『終末から③④』、白水社アナトール・フランス『長編小説集①⑦⑫』『短編小説全集①⑤』、堀田善衛『現代怪談集』など。
金遣いが粗くなってきたなと思うのは、天牛書店に行くのにこれまで地下鉄江坂駅から上り坂を一キロくらい昇っていたのに、今回は地下鉄から伸びている一駅向こうにある北大阪急行線緑地公園駅まで乗ってしまったこと。下りで歩いて500mで行けるのだが、当然線が違うので別途料金がかかるのを、まあいいかと思うようになってしまった。ほかにも、スーパーで値引き商品を買うのに、これまで半額になる前に買ったら負けだと思っていたのに、3割引き4割引きでも我慢がきかなくなってきている。割引狙いの客が増えて、半額まで持たないことも理由の一つ。また、全体の定価が上がってきていることもあり、たとえば肉類、弁当類など半額になってもこれまで定価600円くらいのものまでしか買わなかったのに、1000円越えのものにも手を出すようになってきた。人間こうやって惰弱になっていくのだろうなあ。惰弱の大きな理由の一つは間違いなくカード払いの進展にある。懐にある現金の残額を確認しながら消費するのがどんどん難しくなり、便利ではあるけれど無駄遣いが激しくなる。
新刊本にしたところで、クオカードがなければ絶対に買えないだろうなという値段の高騰ぶりである。事情はまあわかっているのだが。中高校生時代、創元推理文庫で『分解された男』(190円)『十月はたそがれの国』(240円)などが高くて買えなかった原体験を有する人間として、文庫本2000円越えというのは若年層に優しくない時代になったなあと思う。
12月の購入冊数152冊。購入金額18,306円。クーポン使用22,600円。
現金支出としては今年初めての2万円割れ。
なろう本58冊。コミック17冊、だぶりエラーと買い直し13冊。
新刊は1,540円+クーポン18,000円。書店買いは飯田一史『この時代に本を売るにはどうすればいいのか』1冊のみ。あとは初めてのアマゾンギフトカードでの買い物で、筒井康隆『自伝』『SFを追って』、冲方丁『マルドゥックアノニマス⑦⑧』、芝村裕吏『シートン動物戦記①』ほかなろう本6冊。これに頂き本マイケル・コナリー『迷宮 上下』、ジョン・グリシャム『判事の殺人リスト 上下』。多謝。
購入した主な高額本:石森章太郎選集第二期『ゼロゼロ指令①②』(2000円)、小宮豊隆編『明治文化史⑩趣味娯楽』(500円)、倉科信介『忍法妖奇の城』(クーポン800円)など。
少女漫画中心の虫プロの石森章太郎選集は最近見かけなくなってきたので、思い切って購入。まだ半分くらいしか入手していない。
その他の主なところはP・B・メタヴォー『科学の限界』、田辺貞之助『夢想の詩学』、谷口幸男『エッダとサガ』、山本弘『料理を創るように小説を書こう』、岩波講座哲学『①いま<哲学する>ことへ』、ステファニー・メイヤー『トワイライトサーガオフィシャルガイド』、天城光琴『凍る草原に鐘はなる』など。わりと少なめ。
飯田一史『この時代に本を売るにはどうすればいいのか』は目次を見てWEB小説に一章を割いているので購入した。だが、どうやら著者の興味はWEB小説から離れてしまったようで、出版データ等も『WEB小説クロニクル』の時点からほとんど更新されていない。
なろう本からは、芝村裕吏『シートン動物戦記』 (エンターブレイン) 〇
言うことを聞かない規律が守れないと蔑視対象の獣人たちが中心の最前線部隊に自ら進んで赴任した獣人好きのシートン中尉。彼らの前に隣国の大掛かりな奇襲作戦が展開される。だが敗色濃厚な戦局は、シートン率いるマイペースな獣人たちにより大きく変貌していく。
タイトルがまずいい。そうきたかと思わずうなる。『セルフクラフトワールド』でも見かけたお馬鹿キャラは著者の好みなのだろうが、ここでは情動に根差した獣人文化として統合的に理由付けされている。造りあげられた獣人文化の数々の発露になるほどなあと感心させられるが、人間と獣人が共存する社会が長く続いてきているのに、なぜシートン以外そうした文化的背景にだれも気づかないのかが少し不自然。
カクヨムでの連載という形式をとっているが、書籍としての出版を前提にした執筆という気がする。なろう本に含めるべきではないと思う。