日本全集SF・総解説
Notes on the collected works

フヂモト・ナオキ


第三回配本 『早川版世界SF全集第二弾』

 ども。お久しぶりです。なんか『髑髏の書』が話題になっていて、サンリオの未刊本扱いですが、いやいや、その前に世界SF全集で出る話があっただろっ、ということで、唐突に「日本全集SF・総解説」第三回である。

 だいたいは全集といっても、代表作集とか傑作集だったりするけど、出版社と編集者が子供時代の作文まで掻き集めるレベルのやる気を出してしまうと、勢い余ってスットンキョーな文章まで公刊されることになる。

 ということは、真面目な文学者として遇されている文豪の全集でも、雑纂の部とかをめくれば、けったいなモンが掘り起こせるはずでは…。
 そうした発想で「全集本」を掘ってみよう、というのが本来のコンセプトなんで、甚だしい脱線だが、昔から「全集」+「SF」で気になっていたのが、「新」世界SF全集。

 <SFマガジン>でラインナップが掲載されていて、海外SFノヴェルズとして日の目を見た奴もあったけど、シルヴァーバーグとかサンリオに持ってかれて、しかも出ずに終わったんだよな…という記憶はあるが、バックナンバーのこの辺の号だろ、と頁を繰っても、見つからない、を繰り返し、モヤモヤしつつ幾星霜。

 田中すけきよさんの労作『SFマガジンのもくじのもくじ【1970年代篇】』を見れば、あっという間に解決しそうな問題ですが、コミケのような恐ろしい人混みに出かける気力もなく、そのモヤモヤは継続、それが国立国会図書館のデジタル化資料にOCRがかけられたんで、告知文(1974年5月号)に再会。

 記憶では頁の下段に横長のレイアウトで出ていたことになっていたので、それで目に入ってこなかったのか。
 あ、『重力の虹』を早川が出そうとしているって話は全集枠じゃなかったんだ。この辺の記憶は混入であったか。うむ、確かに年代的には微妙にズレているな。

 そもそも、第二次の世界SF全集って、森優さんが早川書房を去るにあたっての置き土産で、ほぼ夢みたいな話だったともいわれているが、当時の読者はワクワクし、いつまでたっても実現する様子が無いのにジリジリすることになったんだよねえ。
 KSFAが現代SF全集はじめたのにも影響があったのかな。
 ともあれ、サンリオに搔っ攫われた二冊が、狙ったように今日まで未訳というのは、美しいんだか、美しくないんだか。
 あと一冊の未訳本、ステルンベールもひょっとしてサンリオ案件?

 アトリエ・サードは、まだブラナー、あきらめてないんだっけ。この際、放蕩息子の帰還と銘打って(放蕩息子?)三冊揃えて早川がなんとかすることで、長い伏線回収ってことにならんものかのお。
 そこで、南山さん呼んで、第二次世界SF全集完結記念会ですよ。

※告知翻刻

SF専門出版を誇る早川書房
本年度の新企画予告!
伝統に立つ本格派から,その枠を破るニューウェーブ派まで,世界第一級作家の最新代表作をセレクトして贈る現代人のための現代SF全集!
早川版世界SF全集第二弾!

収録作品の一部
ロバート・A・ハインライン(米)TIME ENOUGH FOR LOVE
アーサー・C・クラーク(英)RENDEZVOU WITH RAMA
アイザック・アシモフ(米)THE GODS THEMSELVES
J・G・バラード(英)VERMILLION SANDS
ジョン・ブラナー(米)STAND ON ZANZIBAR
サミュエル・R・ディレーニイ(米)THE EINSTAIN INTERSECTION
ロジャー・ゼラズニイ(米)LORD OF LIGHT
ラリイ・ニーヴン(米)RINGWORLD
R・A・ラファティ(米)NINE HUNDRED GRANDMOTHERS
ロバート・シルヴァーバーグ(米)THE BOOK OF SKULLS
フィリップ・K・ディック(米)THE THREE STIGMATA OF PALMER ELDRICH
フィリップ・ホセ・ファーマー(米)TO YOUR SCATTERED BODIES GO
K・H・シェール(独)DER MAIN VON DROS*
ジャック・ステルンベール(仏)LA SORTIE EST AU ROND DE L'ESPASE**
イタロ・カルヴィーノ(伊)COSMICOMICS
スタニスラフ・レム(ポーランド)EDEN
イワン・エフレーモフ(ソ連)CHAS BYKA(牛の刻・仮題)
ストルガツキー兄弟(ソ連)OBITAEMY OSTROV(有人島・仮題)
全版権取得・ただ今訳者交渉中全容は近く発表します。

*いろいろ間違っているが『オロスの男』ですね。
**ROND→FOND

 おっさん世代は、このラインナップだけで、邦題と海外SFノヴェルズの色(第何期)がパッと浮かぶけど(ディレーニとファーマーはいきなり文庫だったなあ、とも)、若者にはチンプンカンプンだったりするんだろうねえ。←と思いつつ放置。
 当然、現代SF全集も謎ワードか。数年前(?)にチラシのデッドストックが出て来たとかいって頒けてもらった案内をこそっと。

 関西海外SF研究会(KSFA)版『現代SF全集』のチラシです。クリックで拡大できます。


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