なろうお勧め100人  (1)

水鏡子


なろうお勧め100人リスト (2023/09/07版) (※リンク先はOne Drive(Excel Online)です)


■解説

○趣旨と凡例

  このリストは2023年5月SFファン交流会で公開し、同8月SF大会で公開した改訂版の「なろうお勧め100人」である。
 もともと2年前にザッタで掲載していた「web小説不完全リスト」が、データベース型である以上しかたがないことではあるのだが、あまりにまとまりに欠けることから思い立ったものである。
 しかしながらこの数か月でも新たに選びたい作家が何人もみつかっており、最終的には200人の倍増リストにすることを検討している。しかし一望するには膨大過ぎることもあり、リストとしての見せ方の工夫も含めてまだまあ完成未達である。
 このあと項目別に章立てしながら説明を加え直していき、それに合わせてリストを差替えながら完成に近づけていくことにする。挫折せずにできるかな。
 今回は、【凡例】として、大枠の説明と項目の趣旨について説明していきたい。

【凡例】① 基本構成

 項目を八つに分け、それぞれに作家を選び、★◎〇の三段階+選外として記載する。年代別の前4つとその他の後ろ4つは内容的には重複するが、恣意的にどちらかに絞り、作家がダブることはないようにした。
 年代別の前4つについては、作者の作品が初めて書籍化された時期で選んだ。執筆時期が古いものも多いが、書籍化という商業出版により作家として認知されたという解釈である。代表作とその他2点を挙げるが、代表作は必ずしもその時期に刊行されたものではない。ぼくが個人的に選んだものである。
 たとえば藤孝剛志の『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』は2016年の刊行だが、『姉ちゃんは中二病』が13年の刊行なので②レーベル確立期 2013年~2015年の書籍化作家に入れている。
 また①先行組 2012年までの書籍化作家に入れた保利亮太『ウォルテニア戦記』の出版レーベルはHJノベルスと記載したが、この時期の出版はフェザー文庫で、3巻まで刊行され途絶した後、15年にHJノベルスで再出版されたものである、というふうに。

【凡例】② 抽出領域

 「なろうお勧め100人」と題しているが象徴として「なろう」を使っているだけで、Web小説全般が対象である。ただ傾向的になろうとカクヨムが中心であり、アルファポリスがそれに続く。ぼくがwebに続きを読みに行くのは、ほぼこの三つに限られ、エブリスタやpixivは覗いたこともない。剣と魔法とSFに限定。恋愛ホラーミステリ類は一部有名作品を選出外に記載するに留めている。読んでないし読みたくないし。

【凡例】③ 書籍とweb

 書籍化された作品が対象であるが、続きをwebに読みに行ったものが多数あり、評価基準は既読部分を踏まえて判断している。書籍化部分がweb掲載の数十分の一でしかないものがごろごろしている。また逆に、読み応えがあったにもかかわらず、書籍化されたことで満足したのか、編集者とトラブったのか、あるいは早々に売れ行き不振で打ち切りにされて心折れたのか、物語の区切りもつけず更新を中断したものも多数ある。「完」「継」「止」はそうしたwebの状況である。

【凡例】④ 項目区分

 ①先行組10人 2012年までの書籍化作家
 ②レーベル確立期の20人 2013年~2015年の書籍化作家
 ③拡大期の20人 2016年~2019年の書籍化作家
 ④現在期の10人 2020~2023年の書籍化作家
 ⑤安定多作系10人(6点30冊以上書籍化)
 ⑥女性・女性レーベル作家10人
 ⑦短編・単発系10人
 ⑧web作家転身組10人

 年代別の①~④がメインであり、⑤~⑧はその補遺になる。

 ①2012年まで、②2013~15年の3年間、③2016~19年の4年間、④2020年からの4年間、としたが、④が少ないのはブックオフでの購入が主体であり、新作が高くて買えないくて買ってる量が少ないことが理由のひとつでもある。

 最終的には、3年ごとに区切って5分割することを検討している。その場合④現在期を、④安定期⑤現在期と区分分けすることになる。

①~④、⑤~⑧の区分け理由について

 ①先行組

 2011年秋にヒーロー文庫が創刊される。刊行作品がすべて即重版がなされ、そのすべてがなろう系作品であったことに出版界に衝撃がはしる。
 Web小説が、売り物となるジャンルであると認知され、編集者は出版企画を上司に上申可能となり、作家志望者は新人賞以外でのデビュー経路を発見し、書籍を通じて大量の読者がなろうサイトになだれ込んだ。
 正直、只で読めるものを書籍化してカネになるとは思えないというのがたぶん作家を含めたそれまでの業界関係者の偽らざる思いであったところだろう。ブロガーの書籍化はフォロワー数で判断されるといった事例はあったが、エッセイ、お説教が似たような内容で売れるのはわかるが、若干の手直しをしたところで、小説は本質的に同じものであるわけで。また先行した携帯小説の成功はあったものの、私小説ぽいものとエンターテインメントではジャンルが異なり、エンターブレイン、電撃文庫のものは言うなれば同人誌からの一本釣り、フェザー文庫は出来高制でトラブル多発、アルファポリスはクラウドファンディング仕様といった状況だった。
 これが、ヒーロー文庫の成功で一変したのである。

 ②レーベル確立期の時代に入る。

 web小説に関心のあった各社編集者の出版モデルは、『まおゆう』『レイン』『ゲート』のような傑出作品の一本釣りでたぶんあった。それがヒーロー文庫の成功で、むしろなろうを標榜した方が売れるようだと「なろうレーベル」の立ち上げへ舵を切った印象がある。この時期出版された主要作品は、ヒーロー文庫の成功以前から著者編集者の口コミその他で注目されていた安定感のある信用できる作品が多い。反面、その多くの魅力が定番化され、後続の作家にスキルアップされながら使い回され、現在の目線でみると少し平板化しているきらいがある。
 2014年の年末に刊行された、『このライトノベルがすごい! 2015年版』でぼくの知る限り最初のweb小説を俯瞰した特集が組まれ、翌年には『この「小説家になろう」がアツい!』『このWeb小説がすごい!』が刊行された。ぼくの基本的な立ち位置はこの3冊を熟読玩味することで形成されたわけだが、おそらくこの時期において、「なろう系」は幅広い読者層の認知を得、一般化したと考えられる。
 コンテストの出現もこの時期である。アルファポリス、エブリスタなどの各サイトやレーベル単位の新人賞が既に先行して存在はしていたが、2012年の秋に募集が開始され13年に結果が発表されたのが、「小説家になろう」と複数の出版社と提携し大規模に展開された「エリュシオンコンテスト」である。第1回の受賞が『壊天の召喚撃退士』で、その後「なろうコン」を経て「ネット小説大賞」と名称を変える。毎年20篇以上、計300篇近くが受賞し、そのほとんどが書籍化されている。コンテストというより、商業出版のための見本市のような性格とみなせる。

 ③拡大期の時代

 拡大期の時代はレーベル確立期の時代の様相を見て、いくつもの新レーベルが立ち上がっている。前述の3冊によってジャンルの全体像がつかめるようになったことも大きいかもしれない。「ネット小説大賞」によって、編集者がみつくろいやすくなったともいえる。またヒーロー文庫をきっかけにweb参入者が大量に増えて、村(サロン型)から街(群衆型)へと移行した感がある。作家についてもヒーロー文庫を読んでこれなら俺も書けると思った若い層が増えた気がする。
 当初のweb投稿の作家にとって、執筆のモチベーションは自分を第一読者においた、「書きたい」「読ませたい」ということだったように思える。只で読めるものを書籍化してカネになるとは思えない、よほどの傑作として評価されるものでもなければ、それでもあわよくば本にしてもらえるやもしれない。それが書き手の実感だったように思う。
 それがヒーロー文庫の成功で、「書きたい」「読ませたい」より「作家になりたい」「受ける話を作りたい」という自分を第一読者に設定しない執筆者が増えたように思える。Web読者人口の拡大と低年齢層の増加も変質に拍車を掛け、型通りのストレスフリーなチーレム話の需要が高まったようにみえる。
 肩の凝らないその手の話も実のところ嫌いではない。文章練度は年々上昇している。ただその手の話を人にお勧めしたいかというと別の話になる。書きたいこと、物語世界を紡ぐこと、そんなところの切実さが伝わるような作品をできるだけ拾い上げたい。
 最終的に時期の区分を5つに分けたいと思っている理由には2018年の秋から2019年にかけて創刊された三つの意欲的なレーベルがある。「レジェンドノベルス」「電撃の新文芸」「ドラゴンノベルス」である。個人的に好ましかったのは、積極的な販促企画を行い、大人のためのファンタジイを標榜した「レジェンドノベルス」だったがそれが災いしたのか一般購入読者層の支持を得ることができなかったようで中絶する。ただ、その後、同じ講談社から出ていた個人的には評価の低かった「Kラノベブックス」に色合いのちがう作品が混じりだす。このレーベルからの質流れでないかと推測している。

 ④現在期

 現在期については、ブックオフでなかなか220円にならないので選んだ人数が少な目。ちょっとした思いつきで小細工してオリジナリティを出しているつもりの稚拙な追放ざまあと悪役令嬢が跋扈している現状だが、とにかく数は大量に出ているので、どさくさに紛れてそれなりの話がそれなりにみつかる。物量は正義。

 ⑤安定多作系

 安定多作系10人(6点30冊以上書籍化)は現在すでに30冊以上の本を出版している作家である。個人的には、1作2作の長い長い話を延々と書いている作家に共感するので、やや評価は厳し目になる。実際、作家としての生活の安定のため、余念なくマーケティングリサーチを行い、書籍の分量に合わせて受ける要素を盛り込んだテンションに欠ける作品が目立つようになる。初期の作品に比べて物足らなくなった作家が何人もいる。

 ⑥女性・女性レーベル作家

 女性・女性レーベル作家10人だが、ここは正直調査不足。そもそも筆名から男女の区分けが難しく、レーベルとあとがきなどのニュアンスからおそらく女性であると推測するぐらいしかできない。しかもアルファポリスとかヒーロー文庫とかあとがきをつけないレーベルもいくつもあるし。
 先駆者である『レイン』の吉野匠とか『神様は異世界にお引越ししました』のアマラとか有名どころですらどちらかよくわからない。なんとなくどちらも女性っぽい印象は持っているのだが。『シャルパンティエの雑貨屋さん』の大橋和代は男性であるとご教示いただいたのだが、アリアンローズという女性向けレーベルということでここに含めておくことにした。
 基本的にアリアンローズ、レジーナ、各種レーベルfシリーズを中心に選定しているが、雰囲気的に忌避していたアイリス系が三村美衣によると面白いものが多いという。そうですか。あんまり広げる元気がないなあ。
 なお項目区分①~⑤にそれなりの数を先行して選出してある。

 ⑦短編・単発系10人

 だらだら長々紡いでいくのがなろうのひとつの特徴といえる。読み始めた最初のころは無駄に冗長でいい加減な書きっぷりと感じたものだが、ふと気がつくと、ああ、これはひとつの「自然体」なのだと肯定的に捉えることができるようになった。書き出しの世界設定や性格付けはわりといい加減であったものが、後付け的に不備な部分を埋めていける。少しづつ立派な世界に育っていく。もちろん初期設定で終始していくだめな作家も少なくないけど、意識的無意識的に不具合を埋めていく作家が少なくないのだ。そこに自然なよさがある。
 なろうを読んでいて、初めて過去に読んだ傑作類の評価の一つが、人工的技巧的な物語性という真逆の部分にあったということにも気がついた。どちらが良いとか悪いとかではない、どちらもいいのだ。ただそれは、近代小説が積み上げたもので、過去の物語とはむしろこういうものではなかったろうか。『源氏物語』などなろう同様乞われて書き連ねられたものではなかったろうか。『あさきゆめみし』しか読んでないけど。
 そういうわけで、中短篇や単行本1,2冊程度で完結したものをだらだら長いなろう系に含めるのは違うように思え、別建てとした。分量の少なさが結末を見渡せることから普通の小説に近い骨格に落着しているように思えるのだ。たまたま短く収まっただけでいかにもなろう風なトラベローグである『横浜駅SF』なども混ざるが。

 ⑧web作家転身組10人

 最後はもともと商業作家としてデビューしていて、web小説に可能性と魅力を見出し、webに重心を移した作家である。
 それ以外にも、重心は元のジャンルに残しつつ積極的になろうに挑戦する瀬尾つかさや、商業出版されたものをwebでのリメイクを試みる安井健太郎のケースも含めた。

 以上がリストの大略である。
 次回以降、この大略に沿うかたちで、「なろうお勧め200人」を項目別にリストと解説を掲載していく予定である。


『なろうお勧め100人』インデックスへ

THATTA 424号へ戻る

トップページへ戻る