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ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。



 6月です。早くも梅雨と思っていたら、もう末期特有の大雨とは。すると、もう梅雨明けなのか(が、冗談では済まない今日この頃です)。

 木下さん、木口さんの創元SF短編賞応募作が(THATTAの前号と前前号とで)両方とも掲載されました。今回はその感想を書いてみます。THATTAなんだから、ある程度率直に(遠慮なく)書いてもいいでしょう。


MS Image Creater(DALL-E)にて下記文章から生成

 まず最終候補作にもなった木下さん「遥かなる賭け」です。こちらは本格宇宙SF。物語はOISTの科学者が、宇宙からのメッセージを受信したところから始まります。しかも、そのメッセージはLincosという地球外知性との交信用に作られた人工言語で書かれていた。これは本物なのか、フェイクなのか。そこから、物語は7億年前に存在した金星生命が自ら語るエピソードに移ります。エキサイティングですね。

 とにかくアイデアが炸裂!していて、この太古の金星生命(きわめて擬人化されている)、その驚くべき計画、高層大気中のクラウド、地球との関係、金星の生命賛歌、あかつきによる探査の話と盛りだくさん。まだまだ続いて、メッセージの機械翻訳が正しいのか嘘か(というレム的問いかけはあっさり通過)、事故と救出シーン、アーカイブの発掘、驚異の事実と目まぐるしく展開します。これだけ詰め込めた想像力だけでも、大したものといえるでしょう。

 ただ、この結末なら金星クラウドの意味が薄い、どうつながるのでしょう。長編ではないので、お話の枝葉が入る余地はそうはない。結末につながる伏線を冒頭から張り、エピソードの絞り込みをもう一段、二段すべきでした。ハードSF、中でも宇宙SFは(ニッチではあるものの)いまも求められている分野でしょう。そういう書き手に対しての期待は大きいと思います。


MS Image Creater(DALL-E)にて下記文章から生成

 一方の木口さん「あたしはまだここにいる」は手記のスタイルです。舞台は近未来の2044年、主人公は42歳の女性研究者で数理モデルのシミュレーションなどを扱うチームのリーダーです。そこでは何か重大な異常が起こっていて、連日世界の研究者とフォーラムで議論が交わされます。セロトニンの前駆体? Dハイドロトリポイド? 何がトリガになっているのか。どうやら奇病が蔓延しているようなのです。

 (悪い意味ではなく)とても淡々としたフラットな物語です。真因がなかなか見えない中で、静かにお話は閉じていく。ただ、最後にある仮説が提示される。著者は承知の上なのでしょうが、この結末は唐突です。論理的だと納得できる人は少ないでしょう。もっと執拗に説明を重ねた方が良いと思います(普遍生物学を逆手に取ったネタ?)。著者にとって自明のことでも、一般SF読者の理解に及ばないものはいろいろある。いや、もちろん誰向けに書くかは自由ですよ。それでも、特定スキルの読者に絞るのでは公募作品として狭すぎる。

 ネタの方向的には、小松左京の「牙の時代」(古すぎますが)に近い、あれはちょっとホラーぽいけど。そういう大時代的な大仕掛けも「SFミニマリズム」(山田正紀)の時代には新鮮ではないでしょうか。ハードSFは文体とか人物描写、小説の巧さを売りにするものではないと思います。大ネタ一番でよいでしょう。それだけにネタが分かりにくいのはどうか。

 木口さんも木下さんもハードSFを目指しているわけで(トレンドとか売れる売れないはともかく)その路線は正しい。キャラ小説を意識するなど、流行に左右されずに書いた方が良いと思います(キャラものはうまい人がプロアマを問わず大勢いて、血で血を洗うレッドオーシャンに沈むだけです)。

 前回の続きです。今回は、GoogleのBardがリリースされたので使ってみました。条件を箇条書きにして何を書くかを試しています。



 しかしながら、小説の出来はあまり芳しくありません(というか小説になっていない)。GPT3.5 よりもダメ、不得意なのかも。最初にTransform(GPTの「T」の部分にあたる技術)を開発したのはGoogleなのに、他社に先を越されましたね。でも、最終的にはGoogle検索に取り込まれていくので、MSのBingと似た運用になると思われます。検索ならば、母体となるデータベースの蓄積は明らかにBingよりGoogleの方が優れています。Bardは中途半端にリリースされましたが、将来的には良くなっていくのでしょう。

 さて、どうしようかと迷うところですが、仕方がないので次は自力で小説に仕上げる努力をしてみます。わたしも小説をそれなりに書いてきて、都合3000枚(上記単行本6冊相当です。kindleアンリミテッド会員なら読み放題! 8年前から書いているAIテーマは、今こそ読んでいただきたく)を費やしたものの、プロから見たら半年~1年分にすぎませんよね。研鑽不足ですが、AIと果たして勝負になるのか??

 ところでAIについては百花繚乱はいいとして、混沌を乗り切るための7か条があります。最後に紹介します。

1.わからないのは当然、まずは基本を押さえよう(AI業界にはさまざまな派閥があって、独特の専門用語を使って分かりにくい説明をする)
2.どのAIについて話しているかを見極めよう(いろんなAIがある)
3.将来どうなるか憂うのではなく、今どう使えるのかを考えよう(人類が滅びる!とか恐れるのはそのあと)
4.AIで何がしたいのか(期待値)を分かって使うこと(やみくもに使うと嘘をつかれても気が付かない)
5.擬人化しない(どんなに人に似ているように思えても、相手は人間ではない)
6.政治的なものだと思っておく(今のAIには政治的な動きが大きくかかわっている)
7.怖がるな(どんなに万能に思えても、所詮プログラムなのだ)


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