ウィアード・インヴェンション〜戦前期海外SF流入小史〜00a

フヂモト・ナオキ


番外編

 001〜006をファースト・シーズンってことにして、セカンド・シーズン前に一息いれることに。英米モノは、なんか資料を集め過ぎて、何が何だか良く分からなくなっているので、この連載では非英語圏縛りでネタを選択しとるんだが、結局、大半がフランスになってるねえ。ついでなので、セカンド・シーズンもほぼフランス・ネタでつっぱしる予定。
 しかしこれからフェミナ賞作家2名、ゴングール賞作家1名、アカデミー小説賞作家なんかが控えていますよ。これってひょっとして豪華なラインナップ? というかひょっとして同姓同名の別人? 白水社にコネがあったら、ついうっかり<ふらんす>に「フランス文芸翻訳黒歴史」とかゆー連載企画を持って行って怒られてるね。そんなフランス文学史の恥部を暴くようなマネは石泉社にでも行ってやれっ。←って、随分前からありません。

 そういえば、サドゥールの『現代SFの歴史』は、うちではブライラーの『SFアーリー・イヤーズ』の続編が出て間もなく、どこかの山に埋まってしまったのだが、考えてみるとフランスSFの話も書いてあったよなあ。
 ということで、長らく探していたのだが、どうしても発見できず、図書館へ出かけて開いてみることに。結果、この連載とはほとんど関係ないことが判明。遥か東洋の小国でまで読まれた作品をオミットしとって、ええんかサドゥール。いやまあ、同書では、フランスSFはおまけ扱いなので問題なしといえば問題なしですけど。
 ま、埋まってしまって発見できない本は、それこそ無数にあるんだが、最近はちょっと置いて目を離した途端、見失って見つけられない本が続出するという末期症状。ごにょごにょと言い訳してゴマかしている箇所は原稿を書いている最中にモノが行方不明になって現物確認できなくなったところなので、見逃すように。

 ともかくそんな状況で年度末も迫っているし、原稿は全然進まない説が。ちょっと休載しようかとも思う訳であるが、その後には、年度始めというのも控えているし、よそ見をしてたら、あっという間に、また年末である。
 じゃあってんで、雨傘番組として、手抜き企画を並走させてリスクヘッジを図り、来月から二三回、そのお試し版を挟んだ上で、セカンド・シーズンをスタートさせるか。
 本当に手抜き出来るかどうか良く分からないが新企画は「日本全集SF・総解説」だ。日下三蔵先生に、こらっ! と怒られたら、すぐ「日本SF以外全集・総解説」に変更するということで。←って、それならいいのか。

 とりあえず以下、ほっとくと必ず忘れてしまうに違いないファースト・シーズンがらみの補遺ネタ。

 タルド(001)については、まあ、出るべくして出たんでしょうが、突如『模倣の法則』河出書房新社が出ましたねえ。でも、これが売れても『未来史の断片』の新訳は出んよなあ。あと、タルド作品に触れた文献としてロザリンド・ウィリアムズ『地下世界』平凡社をお忘れなく、というご指摘を受けました。いや、『地下世界』がタルドを取り上げてたなんて、すかり忘れてましたよ。

 忘れていたと言えば、上田敏の少し前に<日本人>でも紹介文が掲載されてたんだよなあ。別の資料を探していてメモにぶち当たって吃驚。「仏国のガブリエル・タルド氏の著述にして近来出版されたる『地下の人』なる奇書は・・・」これまた全然記憶に残ってなかったよ。
 あと中島健蔵『回想の文学』に昭和17年にシンガポールで英語講演をした話が出ていて、日本文の原稿が残ってたので写しとくね、とその講演内容が記されている。そこで、穴を掘ってたら中国人がいたけど見なかったことにして埋め戻したくだりに言及。偉いフランスの学者にして、この東洋人蔑視だよっ、ケッ。とかいってます。←もちろん、実際に「ケッ」と発言しているわけではない(と思う)。中島だからやっぱり、田辺訳ではなく原書で読んでるのかねえ。
 一応、初出のRevue internationale de sociologieもチラ見。へー、『未来史の断片』をfantaisie sociologiqueとかいってるね。

 ロビダ(004)についてはネットに画像データが結構でているんだから、手を抜かずにリンクを張っとけっ、という説が。まあ、探している人は既に辿りついてるかと思いますが。

 近代デジタルライブラリー(国立国会図書館)
■第二十世紀 / ロビダ−著他,岡島宝文館, 明19−21
(1)
(2)
(3)

世界未来記 / ア−・ロビダ著他,春陽堂, 明20.6

社会進化世界未来記 / ア−・ロビダ著他,春陽堂, 1887

 ガリカ(フランス国立図書館)
La vie electrique : le vingtieme siecle / texte et dessins, par A. Robida

 ところで最近、買ったまま開く間もなく埋まってしまった『絵で見るパリモードの歴史』が発掘されたので、やっと目を通すことに成功。偉そうに、ロビダ・ファンは当然買って読んでいるよねえ、みたいな書き方をしたような覚えがあるが、白状します、全く読んでませんでした。いやフヂモトが突っ込みを入れていない時点で、読んでいないことはバレバレだって。

 訳者まえがきの、ロビダが描く未来世界の要素を記したくだり「この三部作には、空飛ぶエンジン、X線、化学兵器、テレビとテレビ電話を融合させた「電話望遠鏡」」などという絶妙なボケが。ここはすかさず「その「空飛ぶエンジン」って何っ? それは普通「航空機関」といわんのかっ。」と突っ込むべきポイント。
 あと「『世界進歩第二十世紀』(服部誠一訳、岡島宝玉堂)と題されて本邦初訳、三年後に『社会進化世界未来記』(蔭山広忠訳、春陽堂)と改題改訳のうえ再版」ってところ。ディティールのマズさは荒俣宏先生に責任があるとして、この文脈で「再版」って言いますか?

 ところでロビダはラブレーの挿絵も描いているので、渡辺一夫がなんか書いていても不思議はない訳だが、ロビダについて触れているのは高橋邦太郎ぐらいや、などという武田寅雄氏の言葉を真に受けて、著作集にもちゃんと入っとったのに(「アルベール・ロビダについて」『渡辺一夫著作集8』筑摩書房、1971)見逃しとったよ。ちゃんと言及しとけよ>高橋先生。←人のせいにしてはいけません。

 著作集収録時に手が入っていて元にあった、原書は見てないけど蔭山訳ってなかなか良いのではと褒めてた箇所とか、初出時の作品リストが削られているので、戦前の「ラブレェの挿絵画家アルベル・ロビダに就いて。」の方がおススメである。って、誰にだ。
 原書を見たが云々という話になってないところをみると結局Le vingtieme siecleは手に入れずじまいだったと思われ。

 なお、ローマン&ビゴー(006)の初出誌の表紙は以下。こんなもんまでうちに置いとくから、資料が出てこなくて難儀するんやっ。もう間も無く、フランス・ネタも資料が取り出せないせいで何も書けないことになるね。


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