続・サンタロガ・バリア  (第34回)
津田文夫


 11月になんだかんだとイベントをこなしてホッと一息ついたら、もうクリスマスが終わっていた。どこにも行ってないし、これといった話題もないなあ。CDはポツポツと聴いている。最近聴いた中ではケンペ/ドレスデンの「ナクソス島のアリアドネ」がよかったな。CDでオペラを聴くのはあまり好きではないんだが、モーツァルトとリヒャルト・シュトラウスは例外。元々一つのオペラを二つにぶったぎったらしいんだけど、そのせいか劇中劇の〈ナクソス島のアリアドネ〉はなんだか話がピンとこない。それは別として心地よい女声たちと軽快な音楽で魅力たっぷりな演奏だ。東京事変「教育」は、「夢のあと」を聴いて林檎が反戦歌を歌うのかと感慨を覚えた。サウンド的にはやや窮屈。

 わずかばかりの今月読んだ本のうち、最初がイアン・ワトスン『エンベディング』。まあ、昔は紹介のみで知っていたから、みんなワトソンてコワもてするSFを書いていたと思っていたんだよねぇ。『ヨナ・キット』とか『マーシャン・インカ』とかタイトル並べるだけでもオオッってなもんだった。身も蓋もない訳者解説には笑ってしまったけれど、作品を読んでいるとやっぱりあの当時としてはそれなりのオーラを持っていて当然のような内容だと思うな。30年前に20歳で読んでいればスゲーッて、みんなに言いふらしていただろうね。「スロー・バード」が傑作だったのはいまでも間違いないところだけど。

 大森望/三村美衣『ライトノベル☆めった斬り』はあっという間に読めた。同人誌ノリという批評もあるが、一般受けもするんではなかろうか、進行がトントン拍子だし。わが家にはここに紹介されている1/3くらいあるが、すべて奥さんと子供が読んだものである。自分で買って読むのは秋山完さんと清水マリコだけ。話題の『みなごろしの学園』はパラパラと斜め読みしたけど、ポルノはどういうこともないが、読者をみくびったようなつくりは嫌いだ。

 大塚英志『物語消滅論』は、主張自体はもうなんども繰り返されているもので、地道というかコケの一念というか、だんだん悲壮な感じも出てきている。方向は違うけど本人が描くところの共産党員だった父親の性格を受け継いでいるようだ。まあ、こういうことを書きまくる人が必要であることも間違いない世の中ではあるんだが。

 『くらやみの速さはどれくらい』を読み始めたら、ちょっとつらかったので、森見登美彦『四畳半神話体系』に逃避。前作ほど力が入っていないけれど、相変わらずおもしろい世界を展開してくれている。同じ書き出しやエピソードを何度も繰り返すのは、ねらいほど効果を上げていないように見える。それでも結構うれしく読めるのは、文体の力だろう。京都に5年間住んでいたけれど、下賀茂神社/糺の森にいったことはなっかたなあ。京大生に遠慮したからではなくて、単に神社仏閣に興味がなかっただけだったんだが。いまなら毎日でも神社仏閣巡りするのになあ。

ではみなさま良いお年をお迎えください。


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