新・気分はリングサイド (第7回)

青井 美香


四月十日(土)
 きょうは午後六時半から後楽園ホール。四歳児同伴のため、うちから車で行きます。首都高が混んでいたので、霞ヶ関で降りたのだけど、けっこう警戒のための警官が目につく。気がつくと、国会議事堂の前を走っていたりしたので、ま、これは当然の場所ですが。「ほら、あれがよくTVに出てくるところよ」「あそこ、壊すの?」「いや、ゴジラがくれば壊れるけど……って、そういうとこじゃなくって」などという会話を交わしているうちに、半蔵門から靖国通り。英国大使館前ももちろん厳戒態勢です。
東京ドームで、プロレスとほぼ同じ時間帯に巨人×ヤクルト戦があるせいもあってか、周囲の駐車場は満杯。レッカー移動のお世話にはなりたくないと、必死に穴場を探す。と、飯田橋よりの、JRの操車場跡に建ったオフィスビル群の地下に、ガラガラの駐車場発見。一時間六〇〇円は高いけど、しょうがありません。そのビルに入っていたセブンイレブンで簡単に夕ご飯(おもにおにぎりね)を調達し、いざ、後楽園ホールへ。

試合前、父親に「すごい音だぞ」と脅されて、いちおう耳をふさぐ四歳児

第一試合の前、TAKAみちのくによる前説(?)

第一試合
○ 石狩・保坂・土方・平井(原爆固め)十島・旭・赤山・稲松×
 TAKAみちのくの道場の若いのが、リングせましと暴れるも、いかんせん、まだまだ線が細いです。こうしてみると、保坂、土方、平井も、すこしは貫禄がつきましたね。わたしたちの席の真ん前の通路では、TAKAが立ったまま、じっと弟子たちの動きを見つめて勤務評定。

第二試合
○ カシン・浜田(腕ひしぎ逆十字)本間・宮本×
 あれ、カシン、マスク替えた? と思わせてそれは別人、カシンは別のところからパイプ椅子を持って入場。本間に椅子戦をやらせようとするカシンと、本間に椅子を許さぬ和田京平レフェリーの攻防……って、それはちがうか。
 試合後、乱入してきた北斗のマイクパフォーマンスあり。「じゃ、(北斗相手に)やってやろうじゃないか」と言っておいて、「全日本を代表して渕選手が」とつけたす茶目っ気たっぷりのカシンでありました。

第三試合
○ 小島・渕(ラリアット)ジャマール・TAKA× 

TAKA、ここでも適当に大活躍

 試合中、小島とジャマールのチャンピオンカーニバル対決前哨戦を思わせる動きもあったけど、まずは無難にピンフォール。

この試合のあと、チャンピオン・カーニバルの入場式。いろいろ変わった全日本プロレスだけど、入場シーンの音楽は昔からのスター・ウォーズのテーマでした。
わたしのお目当ては、NOAHから出戻ってきた大森くん。だって、デビュー以来からのファンですからね。後ろで、「大森って、身体はでかいし、顔だっていいのに、でも、ブレイクしないな」などと声も聞こえたけど、だって、人間がよすぎるんだもん。ま、そういうことにしときましょ。

銀色のガウンにモヒカンの大森くんは腕くんで立ってます

 入場式のあと、場内が騒然。なんと、ハッスルの島田レフェリーとデスラー総統ならぬ高田延彦総統(しかし、この衣装、けっこう似あってたりして>向井亜紀の旦那)が来場し、川田に対してマイクアピール。ハッスル3でゴールドバーグと川田が対戦するらしい。

高田総統のマイクパフォーマンス

休憩

第四試合
○ 大森隆男(アックスボンバー)太陽ケア×
 はい、お目当ての試合です。隣の席で四歳児の腰がひけるのもかまわず(そう、今回はなんと、四歳児、自前の席があるのです。チケット代が痛かった(^^;))、「おおもり〜!」の大声援。
 大森くんも場内の声援に応えて、果敢な動きを……見せるはずだったのに……どうも、やられる場面が多いような気がする。それでもなんとか、ケアから勝利をもぎとります。
 試合が終わってから相方がひとこと。「大森、そうとう緊張してたな」

試合後、レフェリーから勝利者コールをうける大森くん

第五試合
○ 佐々木健介(体固め)嵐×
 健介の雰囲気が変わった、あの優柔不断な健介がいなくなったと驚く相方。わたしのほうはこの試合のコールで、「セコンド北斗晶」と言われてびっくり。時代はこうして変わってゆくのでしょう。

第六試合
○川田利明(片エビ固め)荒谷望誉×
 荒谷の奮起がのぞまれる試合。見事に奮起したのかどうかはわからないけど、この試合の途中で川田は右の拳を痛めた模様(後日の新聞報道によると、指を骨折してしまい、チャンピオン・カーニバル欠場ですって!)。で、荒谷といえば、川田の技で完全に意識が飛んだみたい。リングを降りるさい、痛々しかったっす。

第七試合
○ 武藤敬司(体固め)カズ・ハヤシ×
 この試合、カズは相当、あわやという場面を作って、場内を盛り上げてくれたけど、でも、勝てなかった……、勝ちたかっただろうに……。あんなに綿密に試合を組み立てていたのに、すべては武藤の掌の上だったのね。
 そして、試合が終わると、コールも聞かずに、四歳児を連れてすっ飛んでいくわたし。そう、休憩のころから、彼は「トイレ」とつぶやいていたのです。「休憩時間は混んでいるから、次の試合が終わったら行こうね」と言ったのに、なぜか「全試合終わるまで我慢する」などと言い出す始末。洪水が起こるのが先か、全試合が終わるのが先か、じつにハラハラドキドキの展開が、後楽園ホールのごく局地的な一地点で行なわれていたのでした。
 ま、なんとか緊急事態は逃れたけど、この四歳児に、「行けるところではトイレに行っとく」というラザルス・ロングの格言(?)を覚えこまさなくてはと思った春の宵でありました。


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