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岡本家記録とは別の話(京都SFフェスティバル篇)

 岡本家記録(Web版)もご参照ください。

 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

はるか京フェスを離れて
  京都SFフェスティバル99(11月20/21日)が終わってしばらくたちました。1979年を基点とした第3世代京都大学SF研究会の20周年、KSFA25周年も無事に祝われ、結構なことだと思います。京大の場合は、それ以前のSF研もあったわけで、かならずしもこの数え方が正しいわけではありません(ファンジン「中間子」がスタートした、初代「SF同好会」は1966年に始まり、安田均さんらによる第2世代「SF研究会」は1970年に発足)。ただし、それらは不連続なものであり、連続させたのは、今日の会員の努力(か成り行き)といえるでしょう。最年少会員(1年生)は1980年生まれですよね、いやはや。
 さて、京都フェスの最初の企画は、山岸真による「新世紀の巨匠グレッグ・イーガン」ということで、本年最大の問題作『宇宙消失』、『順列都市』の作者が何者であるかを、作品を通じて解説する試みです。ここに登場する奇妙なロジックは、およそSFファン以外では誰も楽しめないもの。その前提となるガジェットや知識うんぬんというより、思想そのものを楽しめるか否かが問題ですね。最近作では、さらに人間原理に基づく大胆なアイデアが盛り込まれますが、これってカルト宗教の理論武装にも使えるんじゃないでしょうか。



山岸真グレッグ・イーガンを語る

 引き続き開かれたのは「活字消失〜印刷と出版の未来」というテーマ。出版社代表(小浜徹也)、書き手代表(大森望)、印刷会社代表(志村弘之、中西秀彦)ら主に京大OBが、電子書籍コンソーシアム、オンデマンド出版等の最新状況を語るものです。中西秀彦さんなどは、家業が出版会社でもあり、古くから電子化を進めている当事者でもあるため、なかなか実用的な話が聞けます。当面、本を超える携帯端末は現れないでしょうが、コンシューマがいつまでこの形態に愛着を持つかもポイントとなるでしょう。普通の人にとっては、便利かそうでないかが重要なので、装幀や活字には興味はないはず。今の電子端末は本より重く、かさばるので受け入れられないのです。作家代表もいたらよかったかも。発言者の中では、小浜徹也がもっとも保守的なのが意外というか、やっぱりというか。


暗闇の中で語られる出版の未来。左から志村、大森、中西、小浜

 「ヤングアダルト総括」では、喜多哲士に三村美衣という、この分野では最適な論客が語る99年出版状況の総括。ヤングアダルトという言葉の由来と、それが好きか嫌いかという解説を交えた、なんとも感覚的な内容。という意味では、総括になっていない。2人とも、語るには年老いていすぎる(ヒゲのおじさんと、コワイおばさん)ともいえますが、新人賞の受賞年齢が30代にシフトしつつある現状からは、意外とそうでもなく、これが同時代なのかもしれません。


こまった喜多哲士と口ごもる三村美衣

 「H2ロケットレポート」では、笹本祐一氏の撮影したビデオ映像と、失敗前後の状況について、野尻抱介氏と対談。報道の割には、あいかわらず日本社会は閉鎖的で、情報公開の先頭を切っていたのは野尻掲示板だったというのは、意外というか、やっぱりというか。日本では、別にロケットに限らず(会社でも、公的組織でも)失敗は1度でも認められないのが通例でした。失敗したやつは、ウラで左遷。それがために、責任はなるべく曖昧にします(日本社会で責任を取る=自殺となることも多いので、誰しもこれは避けたい)。実のところ日本製品の品質の良さは、失敗ゼロの思想から生まれたものです。ただこれは、コスト高要因を生み、世界競争に負けてしまうものもあります。世界的に見れば、そのようなリスクは製造者のみが負うものではありません。結局、失敗したことで教訓を得るほうが、トータルコストが安くつくからです。


H2ロケット報道で全国に知られる笹本祐一

 さて、合宿企画についてはすでに多くの記事もあり、ここであえて詳細は述べません。まーしかし、クイズの話題を見ても、日本SF発祥からおよそ40年、古代人の常識は現代人の常識で測りかねるわけで、一から説明する労苦も負うべきでしょうね→山岸真。教科書で教えない常識とか(とはいえ、大半は別に知っておく必要もない知識かも)。


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