気分はリングサイド――わたしのプロレス観戦日記(4)

青井 美香


1月2日(土)
 休みの日だというのに目覚ましかけて、新年早々、後楽園ホールへ。ひょっとしてわが家では、これが初詣でがわりなのかもしれません。きょうは全日本プロレスのジャイアント・シリーズ開幕戦。新聞発表で知ってはいたけど、馬場さんがお休みの貼り紙は、ちょっと寂しいもの。
 第一試合は、軽量級4人によるタッグマッチ。気がついたのは、金丸の体調の悪さ。風邪でもひいたのかしら。それと、橋くんはむつかしい立場だなぁ。パワーでは同期の森嶋に負けるし、技の多彩さでは丸藤のほうが上。どう自分のポジションをとっていくか……。
 第二試合は、パワーファイター同士の戦い。でも、(井上)雅央、ここで泉田に負けてどうするの?
 このあと、全選手そろっての新年のご挨拶。例年だと、馬場さんのマイクがあるのだけど、今年はどうするんだろうと思っていたら、やっぱり三沢の挨拶でした。こうして徐々に馬場さんから三沢へと政権移譲がおこなわれていくのでしょうか。ところで、選手がリングから降りるとき、新人選手が第三ロープと第二ロープのあいだに座って、ロープの間をひろげて、先輩選手が降りるのを手伝うのですが、こうも全選手が集まると、リングから降りるだけで大変。なかでも腰の悪いラッシャー木村が降りるのに苦労しているのを見た大森(隆男)くんは、さっと自分がロープに腰かけたのでした。ううむ、いいやつ。そうそう、大森くんは髪がのびて、なんか、ますます生まれてついてのベビーフェイスといった感じ。彼、このぐらいの長さが一番似合うんだけどなぁ。
 第三試合は、馬場さんのいないファミリー軍団対悪役商会の試合。でも、馬場さんのかわりに入った(本田)多聞がけっこういい味を出してました。
 そして休憩後、第四試合は、大森くんがウルフと組んで、キマラ・オブライト組と対します。試合開始前からこれはうるさいタッグマッチとなるなぁと思っていたけれど、ばっちり予感的中。いやぁ、ウルフも吠えれば、大森くんもエプロンサイドから檄を飛ばしまくり。もちろん、キマラは相変わらずのキマラ語でリングを盛り上げるし(?)、オブライトもオブライトでけっして静かではありません。わたしの席のまえの通路で、場外戦で吹っ飛ばされた大森くんがのびてたりと、個人的にはなかなかおいしい試合でしたが、結果は、連携にまさるキマラ・オブライト組がウルフをのしての勝利。
 第五試合は、垣原・高山組対エース・ガン組。試合には負けたけど、試合後、エースとのがんのつけあいでは勝った高山。貴重な人材かも。
 第六試合は、6人タッグだけど、眼目は闘う国会議員、馳先生対ベイダーでしたね。金髪に染めたモスマンも、目立ってたけどね。
 第七試合は、バーニング正規軍、小橋・秋山・志賀対アンタッチャブル三沢・小川プラス新崎人生。この試合のキーマンは志賀。それが自分でもわかっている志賀は、志賀なりに一所懸命がんばったけど、力及ばず。
 そしてメインは、新春恒例ヘビー級バトルロイヤル。みんなお屠蘇気分なのだけど、一人だけ真剣だったのは、今度の横浜(1月15日)で小橋とシングルをやるベイダー。小橋めがけて突進し、小橋は流血。両者アウトになったあとも、場外でもみ合いつづけ、秋山は小橋とベイダーをわけるために、リングには戻らず。わりとさっさと負けた大森くんは、通路に高山と一緒に立って、リングを観戦。プロレスファンに戻りきって、笑っている彼の姿がとてもかわいくて……(キャッ)。
 ところで、見事優勝して、賞金をかっさらっていったのはキマラでした。

1月15日(金)
 ええ、1月3日にも後楽園ホールに観に行ってるんだけど、時間がたったのでパス。その日、目についたのは小橋の怪我。いやぁ、痛々しかったっす。
 で、15日の成人の日。横浜文化体育館まで行ってまいりました。なにせ、因縁のベイダー対小橋のシングルマッチがメインですからね。
 この日は寒かったので(天気予報では雪だったけど、ありがたいことに降らなかった)車で会場へ。
とりあえず、きょうはこの一試合につきます。もちろん、メイン。あ、その前にきょうの大森くんの試合は、あわやアップセットと思わせるいい試合でした。本田のゆっくりジャーマンがエースに炸裂。ひょっとしてエースからピンがとれるかと思わせましたが、ま、そうは問屋が卸さない。大森くんは本田・泉田のアジアタッグ王者チームにまじって、そこそこの活躍。
 そして、注目のメイン。小橋対ベイダーのシングルマッチ。わたしが座っていた席は、ベイダーが入場してくる通路のすぐ脇。ベイダーがあばれながら入ってきたら、いや、小橋に負けて、あばれながら帰っていったら、ひとたまりもありません。いやぁ、緊張しました(笑)。
 入場するときから気が高ぶっていたベイダーは、でも、あばれることなく、さっさとリングへ。小橋とベイダーだったら、力と力の真っ向勝負になるかなと思っていたら、序盤戦はわりと静かな展開。けれど、徐々にヒートアップ。小橋のチョップがベイダーの胸板を切り裂き、ベイダーの太い腕が小橋の身体を痛めつける。パワーファイター同士の応酬は、とにかく見ごたえあるの一言。でも、やっぱり怪我は、思った以上に小橋にとってダメージ。小橋のペースになってきたかなと思うと、ベイダーに怪我のところを攻撃され、そこでぱたっと小橋の攻撃が途切れてしまう。
 そうこうするうちに、試合時間は15分を経過。あれ、ここらでベイダーのスタミナタイマーがいつもなら切れるはずなのに……ところが、ところが、この日ばかりはタイマーがいきなり延長されたみたいで、このあとベイダーはムーンサルト二連発(わたしのいたコーナーの鉄柱を使ってくれたので、しっかり見られた)に、ベイダーどすん(なんだ、これは……技の名前じゃありません。わたしの見たままをお伝えしました)と、大車輪。さすがの小橋もこれではたまらず、あえなくフォール。あとでプロレス雑誌の記事を読むと、小橋は肺を傷つけられ、血を吐いていたとか。どうりで、途中から秋山がセコンドにつくのに、通路を突っ走ってきて、扉もあけずに鉄柵を乗り越えたわけです。
 というわけで、ベイダーは小橋に勝利してルンルンだったため、退場通路であばれることもなく、わたしも無事に帰路につけたのでありました。


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